• 森林浴
森が人の魂を引き寄せる

心を癒す森林浴

私たち人間の祖先であるサルは、かつて森林で暮らしていました。森林を出て進化を遂げた後も人間は長い間、森林と深い関わりを持って暮らしてきました。しかし近代に入って、科学や産業が発達するに従って森林は減り続け、森林は私たちの生活から遠ざかっていきました。

かつて私たちの生活に密着していた森林は、今や癒しを求めて意識的に訪れる場所となっています。私たちは魂の浄化を求めて聖地を訪れるがごとく、森林に特別な意味を求めているのです。現代人は、再び森林へ回帰しているとも言えるでしょう。森林が人々の魂を引き寄せるのはなぜなのでしょう。

森林浴

皆さんは「森林浴」という言葉がいつ頃から日本で使われるようになったかご存じですか。実は1982年に林野庁が「健康・保養に国内の森林を活用しよう」と提唱したときに初めて「森林浴」という言葉をキャッチフレーズに使ってから、一般に知られるようになりました。ヨーロッパなどでは、昔から森林がもたらす効果を自然療法に取り入れていました。しかしレクリエーションとして森林を散策することによって、森林の持つリラクゼーション効果を総合的に取り入れようという「森林浴」という概念は日本独自のものです。

林野庁は森林浴キャンペーン時に「全国森林浴の森百選」を選定し、北海道の野幌森林公園、岩手県の安比高原ブナ林、東京都の高尾山、高知県の足摺岬自然休養林、鹿児島県の屋久杉林、沖縄県の西表自然休養林などを森林浴に適した森として選んでいます。これを受けて各自治体なども、県独自の森林浴に適した森を指定するなどして、次第に多くの市民が森林浴を楽しむようになりました。森林浴という考え方は、今ではすっかり私たちの生活に定着しているといえるでしょう。

森林浴がもたらすヒーリング効果

実際に森の中を散策することによって、どのような効果があるのでしょうか。

まず挙げられるのは、「フィトンチッド」の効果です。森の中を歩いていると、爽やかな香りがしていることに気が付きます。この香りの正体がフィトンチッドです。主な成分は、テンペル類と呼ばれる有機化合物です。他の植物の成長を妨げたり、昆虫や動物を遠ざけ、さらには病気から身を守り、殺菌や殺虫をしたりするために樹木自らがつくり出して発散しているのです。このようにフィトンチッドは、樹木が自分を守るために他の生物を攻撃する作用を持っているのですが、人間に対しては逆に有益な作用をもたらします。人がフィトンチッドを浴びますと、自律神経が安定し、その香りでリフレッシュすることができます。肝機能の改善にも効果があり、安眠作用も高いと言われています。フィトンチッドは、まさに「森の精気」ともいえるでしょう。

その他森林浴の効果としては、マイナスイオン、色、音、日差しなどがあげられます。

マイナスイオン

森の中、特に滝や渓流の近くなど、水が霧状にほとばしっている場所では、マイナスイオンが大量に発生しています。マイナスイオンを含む空気が体内に取り込まれると、脳からアルファ波が出て、神経がリラックスして気分が爽快になります。

色のもたらす効果

森の中は、自然の美しい色で溢れています。普段私たちが目にしている人工的な色彩とは異なった落ち着いた色彩や、色鮮やかな広葉樹林の緑が、私たちの目を休ませて気持ちを落ち着かせてくれます。緑色は人間にとって一番明るく見やすい色なので、目に優しいと言われています。

音の効果

森の中は、風に揺れる木々の音や鳥のさえずり、川のせせらぎなど、私たちに心地良さを与えてくれる音で満ちています。これらの自然が醸し出すすべての音は、不安定なゆらぎを持った音、「1/fゆらぎ」と名付けられ、私たちの心を癒す音として近年、注目を集めています。1/fゆらぎのCDなどもいろいろ売られていますが、森林浴をすれば、簡単に1/fゆらぎに囲まれることができます。

適度な日差し

森林の中では、太陽光線が木々の枝葉を透過して降り注いでいるので、光線の約80パーセントがカットされ、ほどよい日光浴をすることができます。真夏でもちょうどよい木漏れ日の中で過ごすことができます。

森の中で瞑想しよう

このように森は、自然からのヒーリングメッセージで満ち溢れています。森の持っている独特の香り、神秘的で厳かな雰囲気は、私たちの心を研ぎ澄まし、体内に宿る自然のエネルギーとリズムを呼び覚ましてくれるはずです。

森の中に佇んで、そっと目を閉じ、1/fゆらぎの音に耳を澄ませれば、自分が森の中に溶け込んでいくのを感じることができるでしょう。森の中ほど瞑想に適した場所はありません。私たちが部屋の中で人工的に作り出そうとしている条件を、すべてそのまま完璧に備えているのです。森の中での瞑想は、私たちに深い安らぎを与えてくれます。

森林浴の科学的実証

実は近年、このような森林の持つ効果を目に見えるかたちで科学的に測定し、もっと私たちの健康に活かそうという試みが広がっています。

森林浴の研究のために、民間企業、医療関係者、官庁などが連携して「森林セラピー研究会」が2004年に発足しました。この研究機関では、実験の測定を通して、森林浴の効果を実証しています。実証された主な効果は次の通りです。

  • 抗癌タンパク質をつくる(ナチュラルキラー細胞)が活性化する
  • 副交感神経のはたらきが活発になってリラックスする
  • ストレスが高まったときに出る唾液中のホルモンが減少する

実験によって、今まで感覚的に語られていた森林浴の効果が科学的にも実証され、今まで以上に森林浴は注目を集めています。研究会では、セラピー効果が確認された森林や遊歩道を「セラピー基地」、「セラピーロード」として認定し、さまざまなリラクゼーションプログラムを楽しめるようにしています。

これらの森林回帰の動きは、まさに私たちも自然の一部であるということを示しているのではないでしょうか。森林の持つパワーを心や身体の健康に役立てようという動きはこれからますます高まることでしょう。

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