コーヒーを飲む時、あなたは「銘柄」にこだわりますか。それともまったくこだわりませんか。普段何気なく飲んでいるコーヒーですが、そこには様々な秘密が隠されているのです。それを知ると、いつものコーヒーブレイクがちょっとだけ新鮮になるかも!
コーヒー豆の原種
私たちがいつも飲んでいるコーヒーはすべて2つの原種に由来しています。世界で一番多く栽培されているコーヒーは、エチオピア原産のアラビカ種です。さらにアラビカ種には、品種改良や突然変異でできた100以上の品種があり、世界の生産量のおよそ80パーセントをこれらのアラビカ豆が占めているのです。キリマンジャロ、ブルーマウンテンといった高級品はもちろんのこと、一般に「ストレートコーヒー」「レギュラーコーヒー」といわれているコーヒーもまたすべてこのアラビカ種です。
いっぽう、缶コーヒーやインスタントコーヒーにはコンゴ原産のロブスタ種が使われています。ロブスタ種はアラビカ種に比べて風味が劣るとされ、より安価に取引されています。この豆には独特の香りがあり、苦みも強く、さらに抽出効率が高いためにコーヒー製品の生産には欠かせません。
最近よく「アラビカ豆のみ使用」と書かれた缶コーヒーをみかけます。つまりあれは、「ドリップをして飲むような、高級な豆だけを使っています」という意味なのです。美味しい缶コーヒーが飲みたいと思ったら、とりあえずアラビカという文字を探してみてください。
コーヒーの「銘柄」と栽培地の関係
通常、私たちがコーヒーを買うときに目にするのは、品種名ではなく、銘柄です。コーヒーの銘柄というのは、生産された地域にちなんで付けられていますが、なかにはジャワ・アラビカなど、地名と品種名が合体している銘柄もあります。ジャワ島では、生産される豆の90%以上がロブスタ種のため、この島で栽培しているがロブスタ種ではないということを強調するために、わざわざ地名の後ろに品種名が付けられました。
モカという銘柄も有名ですが、こちらはアラビア半島のイエメンにある小さな港の名前を取っています。
コーヒーが世界ではじめて飲み物として登場したのは、15世紀中ごろのイエメンです。この地の山岳地帯で盛んに栽培されるようになったコーヒー豆が、モカの港からヨーロッパへ運ばれていました。現在この港は使われていませんが、かつてアラビア一帯で生産していたコーヒーを今でもこの港の名にちなんでモカと呼んでいるのです。
ちなみにイエメンのベニーマタール地区で生産されたのがモカ・マタリで、エチオピアのハラ―地方でつくられたものが、モカ・ハラ―です。どちらも世界の最高級コーヒーに数えられています。
そうかと思えば山の名前(マウンテン)が付けられている銘柄もいくつか見受けられます。キリマンジャロ(タンザニア)やブルーマウンテン(ジャマイカ)、エメラルドマウンテン(コロンビア)などは、品質も良く、価格も高いコーヒーの代名詞になっています。
コーヒーの栽培には、一年を通して平均気温が20度ぐらいのさわやかな気候が適しています。熱帯地方の高地で生産されるのが多いのはそのためです。さらに標高が上がるほど(1200メートル以上)高品質になるとされ、そうなると運搬費や手間もかかるので、価格はさらに上がります。例えばブルーマウンテンは、標高差ごとに3段階にランク付けされた銘柄の中のトップを指し、2番目のランクはハイマウンテンと呼ばれます。その価格差はおよそ1.5倍です。
コーヒーは同じ品種でも栽培される地域によって味が変わります。高級品に限らず、いろいろな銘柄を試して、自分の好みを見つけるのも楽しいものです。