占い師がイラストで描かれるときや、テレビドラマや映画などで占い師が登場するときに、なぜか決まって細く長い棒の束を手に持っているのを見たことがある人は多いことでしょう。なんとなく「占いに使うもの」とは思われるものの、それが果たして何なのかを知っている人は少ないはず。そこで、あの謎の棒の束について、解き明かしていきましょう。
占い師の持っている棒の束っていったい何?
占い師が描かれるとき、西洋系ではなく東洋系の占い師に限って、棒の束を持っているのをよく見かけます。実はこれ、飾りではなくれっきとした占いに使う道具なのです。そこで、この幾重もの棒の正体を見ていきましょう。その素材は竹で、数は50本。名前は「筮竹(ぜいちく)」というものです。
筮竹は何に使うの?
筮竹は、必ず50本がセットになっており、これらを手のひらで掴んだり、指でさばいたりしながら、ある占いを行うのに使われます。その占いとは、「易占」のこと。古代中国を発祥とする占いで、「易経(えききょう)」という書物に基づいて占うものです。この50本の筮竹は、易占を行うときに、手のひらと指を巧妙に使ってさばきながら使います。片手でパッと掴むこともありますし、指で一本一本さばくこともあります。
筮竹には3種類のさばき方がある
この筮竹には、3種類のさばき方があるといわれています。それは、「三変筮法(さんぺんぜいほう)」「中筮法(ちゅうぜいほう)」「本筮法(ほんぜいほう)」の3つです。それぞれの方法は、占う内容によって使い分けられます。ものごとが可能か、不可能か、良いのか悪いのかなどを知ったり、何を重んじるべきなのかを判断するときに用いられたりするのが、最も簡単な方法といわれる三変筮法です。易占でいう、上卦、下卦、爻の3つを得て、その象意で占っていきます。しかし、このさばき方は、いずれの方法も初心者では少しむずかしいため訓練が必要です。
易占ってどんな占い?
この筮竹を理解するためには、そもそも易占とはどんな占いなのかを知らなければなりません。易占は、実は古代中国で皇帝たちによって盛んに使用されてきた占いです。使うのは6本の陰陽の線を組み合わせたもので、あの西洋のタロットカードと同じように、無意識の力によって偶然出た象意によって疑問を解決したり、この先どのように動くべきかのヒントを得たりします。
易占の象意は8つあり、「八卦」と呼びます。八卦には、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」という8つの漢字が当てられており、それぞれ、自然界の現象を表しています。乾は天、兌は沢、離は火、震は雷、巽は風、坎は水、艮は山、坤は地を示します。
そして、この八卦をさらにもう1セット組み合わせることで生まれるのが、「六十四卦」です。例えば、乾と乾をかけあわせた「乾為天」や、坎と兌をかけあわせた「沢水困」などと表されます。この六十四卦には、それぞれに意味があり、その意味で物事を占っていきます。筮竹を用いて、この六十四卦を割り出していくのです。
易占を行う際に必要な道具
そんな易占を行うのに必要な道具は、筮竹だけではありません。他に、「算木」と呼ばれるものも用いられます。これは、筮竹で出した卦を逐一記録していくもので、およそ10cm前後の木の角棒6本セットのものになります。
また、50本の筮竹は、バラバラにならないように、専用の筒に入れておきます。その筒のことを「筮筒」と呼びます。いわゆる箸立てのようなものです。これもよく占い師とセットで描かれるものですね。
これであの占い師が描かれるときに決まって登場する棒の束の謎が解けたことでしょう。興味がわいた方は、ぜひ易占にチャレンジしてみては?